『二人は忘れない』
サラは糞まみれの手を洗って、八雲はまだ拭いていなかったお尻を拭き。
二人は同じベッドに入った。
「大人になっても、絶対あなたは特別」
手をつなぎ、そう力強く断言する八雲の姿がサラには、天満のように見えていた。
特別だと思われていることは知っているし、自分も特別だと思っている。
けれども、それを絶対と断言する姿に、どこか違和感を覚えた。
それが八雲らしくないわけではない。
むしろ、八雲なら特別と言ってくれると、サラはわかっていた。
ただこの『絶対』と断言する姿を八雲らしいのではなく、天満らしいと思っていた。
「特別……なんだ」
「うん……特別だよ」
サラは普段から大人びて見える八雲が、もっと大人に見えた。
何故、子供っぽい天満の姿とタブって見えたにもかかわらず、そう見えたのか。
そう思えたのかを、サラは深く考えなかった。
二人っきりのお泊り会。
サラは覚悟を決めていた。
今日もし八雲がどんな受け入れ難い行為を要求してきても、それを受け止めよう。
あの日、あの八雲が外で糞をした日、サラは自分に言い訳をしてそのまま帰った。
糞を流すのは自分の役目だと八雲に言ったにも関わらず、そのまま放置したのだ。
八雲がそれを食べることを望んでいても、それをただトイレに持って行って流すことを望んでいても、どちらにせよサラは何もできなかった自分を悔やんでいた。
だけどそれは、八雲が目の前にいなかったからだ、そう思っていた。
目と目を向き合って、ちゃんと話せば八雲の気持ちは絶対にわかる。
「八雲、この間はごめんねっ」
「ううん……いいよ」
許してくれる、やっぱり八雲は優しかった。
「……ご飯にしよ」
「うんっ」
久しぶりの八雲の手料理に手をたたくサラ。
けれど、心のどこかで「もしかしたら」という気持ちが芽生えていた。
「あ、あのさ……ご飯、なに?」
「お鍋だよ」
よかった、普通のご飯だった、と一息入れるサラ。
けれど、すぐに自分の間違いに気づいて
「いけないいけない、もし鍋の中に入っていても、ちゃんと私は八雲を受け入れるんだからっ!」
と慌てて、もう一度決心をしなおす。
「どうしたの? 今日はちょっとそわそわしてるね」
「ううん、何でも何でもないよ」
二人で鍋をつつき、デザートにカステラを食べ終え。
一人ずつお風呂に入る。
「あれー、おかしいな」
その間、八雲は一度もサラの想像するような行為を求めてはこなかった。
もしかしたら、鍋の中に入っているんじゃないかとか。
もしかしたら、鍋じゃなくて調味料の方じゃないかとか。
もしかしたら、デザートがそれだったりとか。
そんな想像をしていたのに、いたって普通に食事は終わった。
「もしかして、やっぱり実は怒ってるんじゃ」
そう思った途端、サラの心は不安でいっぱいになる。
「そんなこと……ないよね」
湯船につかり考えをめぐらせる。
もしかしたら、八雲がお風呂に入ってくるかもしれない。
もしかしたら、シャンプーの中に……
もしかしたら、バスタオルにぬってあるとか……
もしかしたら、着替えにぬってあるとか……
など考えというよりは、妄想をめぐらせたものの、何も起こらなかった。
パジャマに着替え、八雲のベッドの上で本人が来るのを待つ。
待っている間もサラの脳内では、八雲がどう切り出すのか、それで一杯だった。
「もしかしたら、下着は変えない方がよかったのかな」
そう思ったはいいが、もう洗濯機に入れてしまった。
だが、今から取りに行ったら、八雲の下着を漁っていると勘違いされても困るため、どうしようもない。
「サラ……本当にどうしたの?」
「う、うわぁぁ、びっくりしたー」
急に声をかけられて驚くサラ。
「あ、あのね、八雲……」
「なに?」
サラはこの疑心暗鬼をどうにしかしたかった。
けれど、自分から言う勇気を振り絞ることは難しい。
「そ、その八雲は私に……」
「サラに?」
だから……その……とモジモジするばかりで、普段のハツラツとした元気がない。
「サラ……サラは私のうんちを流すの、嫌?」
「え?」
やっと八雲の方から、核心をついてくれた。
「そ、そんなことあるわけないじゃん!」
「でも、サラさっきから何か言いたそうにしてるから」
「ううん、そんなことじゃなくて、私が悩んでいるのは」
少し言いよどむ。
けれど、八雲の方からくれた機会をちゃんと生かさないと、と拳を握る。
「そ、その八雲の方が私に流してもらうのが嫌なんじゃないかなって」
「そんなことないよ」
何か思う間もなく否定された。
よかった、と思うと同時に、ならどうして? という気持ちも浮かぶ。
「なんで今日は何も言ってくれないの?」
「……なら」
八雲の目が真剣になる。
サラも固唾を呑んで次の言葉を待つ。
どんなことでも八雲が望むことなら、受け入れよう。
「サラは、私のうんち食べたいの?」
「ええー? 八雲が食べさせたいんじゃないの?」
意味がわからず頭を振る。
「そ、そんなことないよ、サラが食べたそうにしてるから…… その」
「私が食べたそうにしてた?」
「うん」
いつものように頷く八雲を見て、サラは自分のしていた勘違いに気づいた。
自分が八雲がそれを求めていると思って、自分自身の欲望から逃げていたことに。
「違ったかな?」
「違わない!」
思わず勢いで否定してしまう。
「こともないけど……」
けれどすぐ我に返る。
「ねえあの時、私が初めてサラの家でうんちを流さなかったとき」
「うん」
あのときからサラと八雲の奇妙な関係は始まった。
八雲が出したものをサラが流す。
「あの時、私はサラに見て欲しかったから、あんな馬鹿なことをしたの」
「この前聞いたね」
「でも、あの時のサラ。流すときに残念そうだったから……」
サラは自分の勘違いを恥じた。
確かに八雲は最初自分に糞を見てもらいたかったから、あんな真似をした。
けれど、そこから先の関係はサラのことを思ってのことだったのだ。
何が八雲は精神的に弱っているだろう、サラ自分がどこかで八雲を見下していたことが恥ずかしかった。
「だから、私…… サラは私に見られながら食べるのが恥ずかしいのかなって、思って流して欲しいってお願いしたの。一人っきりなら思う存分私のうんちで遊んでくれると思って」
「八雲は優しいね」
「そ、そんなことないよ! だって、結局サラは私のうんちを流してただけで、本当は私が勘違いしただけで」
サラは八雲の手を握る。
「ありがとう、八雲のおかげで私、本当にしたいことがわかった」
「本当……にしたいこと?」
「うん、私、八雲のうんちの味確かめてみたいな」
サラはようやく、自分がやりたこと夢の正体をつかんだ。
「これでいい?」
便器に出すと水につかるし、便器に顔をうずくめるのが恥ずかしい、という理由で八雲はお風呂場で脱糞した。
もちろん、している姿を見ないために、サラは終わるまで部屋で待っていた。
「ありがとう」
嗅ぎなれた臭い、見慣れた形。
今日も八雲の糞はサラの考えていたとおりだった。
「じゃ、じゃあ私部屋にいるから」
さっきサラが待っていたように、八雲も部屋でまとうとする。
「まって、見てて欲しいなっ!」
八雲を呼び止める。
サラは自分が今からすることを見ていて欲しかった。
「いいの?」
「うん、逆に見ててもらわないと、できないかも」
さっきまで八雲やサラが体や髪を洗っていた洗い場に、ぽつんと座っている土色の糞。
「二人一緒に見るの、はじめてだね」
「うん」
この間できなかったことを、改めてサラはすることにした。
「じゃ、じゃあ、いただきます」
顔を近づけ、舌を伸ばす。
さっき食べたお鍋と違って、いい匂いとは到底いえない。
けれど、これが八雲の臭いだった。
「サラ、無理しちゃ駄目だよ」
八雲の忠告を聞いても、サラの舌はとまらなかった。
つんと舌の先で糞を突付く。
突付くたびにサラは舌ではなく、顔が痺れる感覚を味わった。
「くはーっ、これはきついわ」
思わず顔を離す。
顔を揉み解し、舌先を唾液で洗う。
口の中にほんの少しだけ感じる、八雲の味。
「大丈夫?」
「うーん、さすがに噛んだり飲み込んだりはできないかもー」
と言いつつも、もう一度顔を近づける。
今度はいきなり舌をつけるのでなくて、まずは目でちゃんと確認する。
表面の層がぶつぶつと途切れ途切れになっている。
先のほうは縮んでいて、八雲のお尻を通ってきたことがよくわかる。
「よしっ! 今度こそ!」
もう一度舌を伸ばし、今度は先ではなく舌の平で舐め取る。
思わず目をつぶりたくなるが、まぶたが言うことを利かず、瞳が上を向いてしまう。
そのせいで、折角視界一杯が八雲のだったのに、天井が移ってしまった。
と、冷静に自分の見ているものをサラは観察する余裕はなかった。
サラが舐め取った、ほんのわずかな糞片がとてつもなくいとおしい物のように思えて、口を閉じるどころか、鼻を閉じることもできずに、はぁはぁと息を荒くする。
「や、やっぱり、食べるのは無理かなー……」
ほんの一舐めでサラは八雲の味を一杯に感じていた。
それは確かに嬉しかったのだが、それと味は別の問題だった。
「ど、どんな味なの?」
「うーん、すっごい苦い」
味なんかよりもまずは刺激だと説明したかったが、こればっかりは実際に食べないとわかりにくいと思い、サラは多くを語らなかった。
「無理しちゃ駄目だよ」
「うんっ!」
そう言いつつも、サラはこの刺激のとりこになっていた。
一舐めするごとに、顔にくる刺激にはなれて、目が上を向くこともなく、視界を一杯にしながら舐め続けられる。
けれど、五舐めしたところで、限界だったようだ。
「うーん、もう駄目かも」
「そっか……じゃあ、これもう流すね」
と八雲はあらかじめ準備していたのか、ゴム手袋で自分の出したものを掴み取ろうとする。
「ちょっーとまった!」
「え? なに?」
「それを流すのは私の仕事だよっ!」
八雲はようやく気づいたようで、申し訳なさそうにゴム手袋を差し出す。
「いいよ、自分で持っていくから」
サラはそういうと、わしっと一本糞を手でつかんだ。
手のひらが八雲の暖かさで一杯になる。
どうしても鼻や顔から遠ざけようと、手をはなしてしまうが。
それでも、何とか手のひらや指を糞色に染めながら、トイレに運び流すことができた。
「これからは、トイレじゃないところで八雲がしても、ちゃんと流してあげるから」
「……ありがとう」
八雲にお礼なんていいよーと、肩を叩こうと思ったが、自分の手が汚れていることに気づいた。
「おっと、危ない危ない」
「なに?」
「気にしない、気にしない」
サラはこれから先、もしかしたらこの汚れた手でも八雲と触れあえるのかなあ、と考えていた。
その後、二人は自分たちがお互いに特別だと約束して、二人で一つのベッドに寝た。
その夜、サラは夢を見た。
大人になる夢。
サラは大学でも八雲が出した糞を探し回り。
時には野外に放置された糞をきちんと、手掴みでトイレまで持って行き流す。
時々八雲に黙ってそれを舐めたりもする。
今のサラが思い描いている日々。
これからきっとくる、最高の日々。
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二人は同じベッドに入った。
「大人になっても、絶対あなたは特別」
手をつなぎ、そう力強く断言する八雲の姿がサラには、天満のように見えていた。
特別だと思われていることは知っているし、自分も特別だと思っている。
けれども、それを絶対と断言する姿に、どこか違和感を覚えた。
それが八雲らしくないわけではない。
むしろ、八雲なら特別と言ってくれると、サラはわかっていた。
ただこの『絶対』と断言する姿を八雲らしいのではなく、天満らしいと思っていた。
「特別……なんだ」
「うん……特別だよ」
サラは普段から大人びて見える八雲が、もっと大人に見えた。
何故、子供っぽい天満の姿とタブって見えたにもかかわらず、そう見えたのか。
そう思えたのかを、サラは深く考えなかった。
二人っきりのお泊り会。
サラは覚悟を決めていた。
今日もし八雲がどんな受け入れ難い行為を要求してきても、それを受け止めよう。
あの日、あの八雲が外で糞をした日、サラは自分に言い訳をしてそのまま帰った。
糞を流すのは自分の役目だと八雲に言ったにも関わらず、そのまま放置したのだ。
八雲がそれを食べることを望んでいても、それをただトイレに持って行って流すことを望んでいても、どちらにせよサラは何もできなかった自分を悔やんでいた。
だけどそれは、八雲が目の前にいなかったからだ、そう思っていた。
目と目を向き合って、ちゃんと話せば八雲の気持ちは絶対にわかる。
「八雲、この間はごめんねっ」
「ううん……いいよ」
許してくれる、やっぱり八雲は優しかった。
「……ご飯にしよ」
「うんっ」
久しぶりの八雲の手料理に手をたたくサラ。
けれど、心のどこかで「もしかしたら」という気持ちが芽生えていた。
「あ、あのさ……ご飯、なに?」
「お鍋だよ」
よかった、普通のご飯だった、と一息入れるサラ。
けれど、すぐに自分の間違いに気づいて
「いけないいけない、もし鍋の中に入っていても、ちゃんと私は八雲を受け入れるんだからっ!」
と慌てて、もう一度決心をしなおす。
「どうしたの? 今日はちょっとそわそわしてるね」
「ううん、何でも何でもないよ」
二人で鍋をつつき、デザートにカステラを食べ終え。
一人ずつお風呂に入る。
「あれー、おかしいな」
その間、八雲は一度もサラの想像するような行為を求めてはこなかった。
もしかしたら、鍋の中に入っているんじゃないかとか。
もしかしたら、鍋じゃなくて調味料の方じゃないかとか。
もしかしたら、デザートがそれだったりとか。
そんな想像をしていたのに、いたって普通に食事は終わった。
「もしかして、やっぱり実は怒ってるんじゃ」
そう思った途端、サラの心は不安でいっぱいになる。
「そんなこと……ないよね」
湯船につかり考えをめぐらせる。
もしかしたら、八雲がお風呂に入ってくるかもしれない。
もしかしたら、シャンプーの中に……
もしかしたら、バスタオルにぬってあるとか……
もしかしたら、着替えにぬってあるとか……
など考えというよりは、妄想をめぐらせたものの、何も起こらなかった。
パジャマに着替え、八雲のベッドの上で本人が来るのを待つ。
待っている間もサラの脳内では、八雲がどう切り出すのか、それで一杯だった。
「もしかしたら、下着は変えない方がよかったのかな」
そう思ったはいいが、もう洗濯機に入れてしまった。
だが、今から取りに行ったら、八雲の下着を漁っていると勘違いされても困るため、どうしようもない。
「サラ……本当にどうしたの?」
「う、うわぁぁ、びっくりしたー」
急に声をかけられて驚くサラ。
「あ、あのね、八雲……」
「なに?」
サラはこの疑心暗鬼をどうにしかしたかった。
けれど、自分から言う勇気を振り絞ることは難しい。
「そ、その八雲は私に……」
「サラに?」
だから……その……とモジモジするばかりで、普段のハツラツとした元気がない。
「サラ……サラは私のうんちを流すの、嫌?」
「え?」
やっと八雲の方から、核心をついてくれた。
「そ、そんなことあるわけないじゃん!」
「でも、サラさっきから何か言いたそうにしてるから」
「ううん、そんなことじゃなくて、私が悩んでいるのは」
少し言いよどむ。
けれど、八雲の方からくれた機会をちゃんと生かさないと、と拳を握る。
「そ、その八雲の方が私に流してもらうのが嫌なんじゃないかなって」
「そんなことないよ」
何か思う間もなく否定された。
よかった、と思うと同時に、ならどうして? という気持ちも浮かぶ。
「なんで今日は何も言ってくれないの?」
「……なら」
八雲の目が真剣になる。
サラも固唾を呑んで次の言葉を待つ。
どんなことでも八雲が望むことなら、受け入れよう。
「サラは、私のうんち食べたいの?」
「ええー? 八雲が食べさせたいんじゃないの?」
意味がわからず頭を振る。
「そ、そんなことないよ、サラが食べたそうにしてるから…… その」
「私が食べたそうにしてた?」
「うん」
いつものように頷く八雲を見て、サラは自分のしていた勘違いに気づいた。
自分が八雲がそれを求めていると思って、自分自身の欲望から逃げていたことに。
「違ったかな?」
「違わない!」
思わず勢いで否定してしまう。
「こともないけど……」
けれどすぐ我に返る。
「ねえあの時、私が初めてサラの家でうんちを流さなかったとき」
「うん」
あのときからサラと八雲の奇妙な関係は始まった。
八雲が出したものをサラが流す。
「あの時、私はサラに見て欲しかったから、あんな馬鹿なことをしたの」
「この前聞いたね」
「でも、あの時のサラ。流すときに残念そうだったから……」
サラは自分の勘違いを恥じた。
確かに八雲は最初自分に糞を見てもらいたかったから、あんな真似をした。
けれど、そこから先の関係はサラのことを思ってのことだったのだ。
何が八雲は精神的に弱っているだろう、サラ自分がどこかで八雲を見下していたことが恥ずかしかった。
「だから、私…… サラは私に見られながら食べるのが恥ずかしいのかなって、思って流して欲しいってお願いしたの。一人っきりなら思う存分私のうんちで遊んでくれると思って」
「八雲は優しいね」
「そ、そんなことないよ! だって、結局サラは私のうんちを流してただけで、本当は私が勘違いしただけで」
サラは八雲の手を握る。
「ありがとう、八雲のおかげで私、本当にしたいことがわかった」
「本当……にしたいこと?」
「うん、私、八雲のうんちの味確かめてみたいな」
サラはようやく、自分がやりたこと夢の正体をつかんだ。
「これでいい?」
便器に出すと水につかるし、便器に顔をうずくめるのが恥ずかしい、という理由で八雲はお風呂場で脱糞した。
もちろん、している姿を見ないために、サラは終わるまで部屋で待っていた。
「ありがとう」
嗅ぎなれた臭い、見慣れた形。
今日も八雲の糞はサラの考えていたとおりだった。
「じゃ、じゃあ私部屋にいるから」
さっきサラが待っていたように、八雲も部屋でまとうとする。
「まって、見てて欲しいなっ!」
八雲を呼び止める。
サラは自分が今からすることを見ていて欲しかった。
「いいの?」
「うん、逆に見ててもらわないと、できないかも」
さっきまで八雲やサラが体や髪を洗っていた洗い場に、ぽつんと座っている土色の糞。
「二人一緒に見るの、はじめてだね」
「うん」
この間できなかったことを、改めてサラはすることにした。
「じゃ、じゃあ、いただきます」
顔を近づけ、舌を伸ばす。
さっき食べたお鍋と違って、いい匂いとは到底いえない。
けれど、これが八雲の臭いだった。
「サラ、無理しちゃ駄目だよ」
八雲の忠告を聞いても、サラの舌はとまらなかった。
つんと舌の先で糞を突付く。
突付くたびにサラは舌ではなく、顔が痺れる感覚を味わった。
「くはーっ、これはきついわ」
思わず顔を離す。
顔を揉み解し、舌先を唾液で洗う。
口の中にほんの少しだけ感じる、八雲の味。
「大丈夫?」
「うーん、さすがに噛んだり飲み込んだりはできないかもー」
と言いつつも、もう一度顔を近づける。
今度はいきなり舌をつけるのでなくて、まずは目でちゃんと確認する。
表面の層がぶつぶつと途切れ途切れになっている。
先のほうは縮んでいて、八雲のお尻を通ってきたことがよくわかる。
「よしっ! 今度こそ!」
もう一度舌を伸ばし、今度は先ではなく舌の平で舐め取る。
思わず目をつぶりたくなるが、まぶたが言うことを利かず、瞳が上を向いてしまう。
そのせいで、折角視界一杯が八雲のだったのに、天井が移ってしまった。
と、冷静に自分の見ているものをサラは観察する余裕はなかった。
サラが舐め取った、ほんのわずかな糞片がとてつもなくいとおしい物のように思えて、口を閉じるどころか、鼻を閉じることもできずに、はぁはぁと息を荒くする。
「や、やっぱり、食べるのは無理かなー……」
ほんの一舐めでサラは八雲の味を一杯に感じていた。
それは確かに嬉しかったのだが、それと味は別の問題だった。
「ど、どんな味なの?」
「うーん、すっごい苦い」
味なんかよりもまずは刺激だと説明したかったが、こればっかりは実際に食べないとわかりにくいと思い、サラは多くを語らなかった。
「無理しちゃ駄目だよ」
「うんっ!」
そう言いつつも、サラはこの刺激のとりこになっていた。
一舐めするごとに、顔にくる刺激にはなれて、目が上を向くこともなく、視界を一杯にしながら舐め続けられる。
けれど、五舐めしたところで、限界だったようだ。
「うーん、もう駄目かも」
「そっか……じゃあ、これもう流すね」
と八雲はあらかじめ準備していたのか、ゴム手袋で自分の出したものを掴み取ろうとする。
「ちょっーとまった!」
「え? なに?」
「それを流すのは私の仕事だよっ!」
八雲はようやく気づいたようで、申し訳なさそうにゴム手袋を差し出す。
「いいよ、自分で持っていくから」
サラはそういうと、わしっと一本糞を手でつかんだ。
手のひらが八雲の暖かさで一杯になる。
どうしても鼻や顔から遠ざけようと、手をはなしてしまうが。
それでも、何とか手のひらや指を糞色に染めながら、トイレに運び流すことができた。
「これからは、トイレじゃないところで八雲がしても、ちゃんと流してあげるから」
「……ありがとう」
八雲にお礼なんていいよーと、肩を叩こうと思ったが、自分の手が汚れていることに気づいた。
「おっと、危ない危ない」
「なに?」
「気にしない、気にしない」
サラはこれから先、もしかしたらこの汚れた手でも八雲と触れあえるのかなあ、と考えていた。
その後、二人は自分たちがお互いに特別だと約束して、二人で一つのベッドに寝た。
その夜、サラは夢を見た。
大人になる夢。
サラは大学でも八雲が出した糞を探し回り。
時には野外に放置された糞をきちんと、手掴みでトイレまで持って行き流す。
時々八雲に黙ってそれを舐めたりもする。
今のサラが思い描いている日々。
これからきっとくる、最高の日々。
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