三流物書きを目指すたつきに薔薇を スカトロ別館

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本茂家の交換日記 羽歌ねぇのおさんぽ日記編

「本茂家の交換日記 羽歌ねぇのおさんぽ日記編」


 もうすぐ梅雨。
 私たちは麺液を買いに近所のスーパーまでお出かけ。
 外に出るとソーメンの季節はまだ少し遠いけれど、ちょっと近づいてるのがよくわかる。
 スーパーまでは、お母さんがいれば車でいくし、いなければ自転車で行く距離。
 だから、私は家からスーパーまでを歩いたことがなかった。
「はかねぇ、はかねぇ。あそこにおはなさん、さいいてるよ! おはな!」
「うん、そうだね」
 でも今日は妹と一緒にお出かけ。
 妹はまだ自転車に乗れないし、子供用の自転車もないので徒歩だ。
 ぶんぶんとお気に入りの黄色いリュックを揺らしながら、道で見かける物を端から指差す妹。
「かんばんー」
「看板だね」
「はしー」
「歩道橋だね」
 新しいことを覚えると、普段歩いている道が違って見える。
 と言っていた小説の主人公がいたけれど、知っていることを改めて口で確認していても違って見える。
 当然妹と歩く前から、歩道橋はあるし、看板もある。
 だけれど、妹の口からそれを聞くと、なんだか新鮮で斬新な物に見えてきた。
 小学校のときよく渡った歩道橋も、ハチミツのハの字が欠けてチミツになってる看板も。
「はかねぇ、スーパーまだぁー?」
 大人の足なら十分のところでも、妹には少し遠かったようだ。
「うん、もうすぐだから頑張ろうね」
「うん! がんばる!」
 いきおいよく、うなずくくので前髪だけでなく後ろ髪も揺れる。
 長い髪、懐かしいな。


 そんな昼は楽しい散歩道だった道。
 私はまたこの道を歩いている。
 誰もいない深夜だけれど、私たちは見つからないようにこそこそ歩く。
 可愛くない方の妹の背に隠れながら。
「いくら暖かいからって……」
 親としての温情だ、なんて傲慢な言葉のおかげでシャツは着せてもらっている。
 それでも、裸足だとコンクリートが冷たい。
「いちいち文句言わないでよ羽歌姉」
「ごめん」
 可愛くない方の妹とはいえ、妹だ。
 彼女のことを思い、素直に謝る。
「この道の電信柱っていくつあるの?」
「うーん、数えてくるね」
 たったと先に行く可愛くない方の妹。
 一人にしないでよ……
 ほんの少しの間。
 あっというまに往復してきた可愛くない方の妹。
 可愛い方の妹なら途中で疲れるほどの距離なのに、やっぱり可愛くない。
「六本だったよ」
 そして報告を聞いて、少し落ち込む。
 六回に分けてうんちするなんて初めてだ。
「多いなあ」
「しょうがないよ、さあ急ごう」


 一本目の電信柱に到着する。
 私は今から家からスーパーまでの、全ての電柱でうんちをしなくちゃいけない。
「はい写真取るから屈んで」
「うん」
 せかされて量の配分を間違えないように、いったん深呼吸。
 妹はきっと、早く帰りたいんだろう。
 本当なら妹の日は明後日だ、今日は彼女なりの予定もあったんだろう。
 その気持ちをすくって、私は恥ずかしがらず電柱の前でかがむ。
「こっち向いて」
「あっごめん」
 自分で恥ずかしがらず、と言った割りに羞恥心が残っていたらしく、顔をカメラではなく電信柱の方に向けてしまった。
 謝ってカメラの方を向く。
 足を広げろなんて命令はされてないけど、後で怒られるのも嫌だ。
 私はおとなしく足を開き、笑う。
 笑わないと取り直しにもう一度いかされるのは、はっきりしている。
「電信柱と羽歌姉とうんちが一緒にうつるように……」
 といいながら妹が後ろに下がる。
 やっぱり、少し不安な気持ちになる。
「うん、ここならいいな」
 向かいの車線に立って、OKのサインを出す。
 さあ、力の入れ具合を間違わないようにしないと。
「んっん……」
 息を吐き出すときに、声が出てしまう。
 お腹に力を入れて、ほんの少しだけ出すように……
 お尻の中が空気にさらされる。
 まだ少し寒いようで、内臓がこごえそうだ。
 腰の方から押し出すように力を入れて、半分だけだす。
「黒いね、何食べたの?」
 私はうんちをぶら下げたまま答える。
「え? えっーと、夕飯はあんたと一緒だし。昼はトースト」
 上の口で喋ると、体が揺れてうんちがぶんぶんと揺れる。
 可愛い妹の仕草と似ているけれど、私はかわいくないよなあ。
 外で半裸でうんちぶら下げてるなんて。
「ふーん、なのにこんな色になるんだ」
 そういえば姉とは排泄物をかけあっているけれど、妹とはまだしたことがなかった。
 だから、妙にそわそわしていたのか。
「あっもう、話しかけるから出しすぎちゃったじゃん」
「ご……ごめん」
 謝られても困る。
 お腹にはまだ残っているから大丈夫だろうけど。
 あと五回も排泄できるかな……


 結局、五本目までは何とか出せたのだけれど、六本目で詰まってしまった。
「ど、どうしよう」
「うん……」
 妹が困っている。
 もちろん、私も困っているし、実際困るのは私の方だろう。
「お、怒られるよね?」
「あんたは大丈夫だろうけどね」
「羽歌姉は?」
「怒られるよ」
 いちいち確認しないで欲しい、私だって怖いんだぞ。
「どうしよう」
 必死に頭を働かせる。 
「さっきまでの所から持ってきて、ここに置けばいいんじゃない?」
「馬鹿、写真とったでしょうが」
 出しているところと、出し終わったところと。
「あっそっか比べられたらわかっちゃうね」
 狡賢いわりに、先のことを考えられない妹らしい発想だ。
「あんた、こういうことまだされない?」
「こういうことって?」
 口で言わせる気か。
 と嫌味にとらえても仕方がない、きっと本当にわからないんだ。
「だから、うんち出したりは、まださせられないの?」
「う、うん…… されないよ」
 妹は少し嫌そうに答えた。
 ”まだ”という言葉が気になったのだろう。
 この子と私の年の差は、五つ。
 五年後には自分もこうなるのだと思うと、気が重くなるも仕方ない。
「なら、あんたのうんち頂戴」
「え? え?」


 思い返すと、私もまだ妹ぐらいの年の頃、よくこうやって姉の偽装工作に付き合った。
 道中で漏らした物を舐め取ったり、あの時は服がなかったからそうするしかなかった。
 脱水症状になりそうな姉におしっこを飲ませてあげたり。
 道行く人の尿をいっぱい集めるときに私のも混ぜたり。
 そういうのに、この子を付き合わさせるのは初めてだ。
 以外と私は優秀なのかもしれない。
「で、でも、出しているところも取らないといけないんだよ」
 出しているところ、というのはお尻からぶら下っている、という意味だろう。
「だから、あんたのを私の中に入れてもう一度出せばいいのよ」
 最近ハマっているのか、よくこういうことをさせられる。
「そ、そんな……」
 確かにこういうことに慣れていない彼女には衝撃なのだろう。
 どうしようかと思案しているようだ。
 もし「どうせ、出来なくても自分には関係ないのだし……」と思われたらそれまでだけど。
「いいわよ、なら私がお仕置きされればいいんでしょ」
「……玲姉みたいに?」 
 そうなると思うなら、黙って受け入れて欲しい。
 実際はそうはいかないだろうけど、それは私の考えることじゃない。
「そうなるかもね」
「……」
 無理みたいだ。
 仕方ない、腹をくくってお仕置きを受けよう。
「わ、わかった。私のうんちあげる」
 よかった、これで怒られないですむ。
「ありがと」
 そっけなくなってしまった。
 けれど、私は本当に嬉しかった。
 昼間に下の妹と歩いたこの道も、今こうして上の妹と歩いているこの道も。
 小学校のときよく渡った歩道橋も、ハチミツのハの字が欠けてチミツになってる看板も、夜だから見えないけれど。
 可愛くない妹と歩くこの道も、少し新鮮だ。
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